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2014年04月14日

「図工室の鉄砲合戦」前口上

 この作品「図工室の鉄砲合戦」は、昨年8月「第二回角川つばさ文庫小説賞」へ応募した作品です。
 残念ながら最終選考4作品には残ることができず、二次選考通過17作品の内の一作に入るにとどまりました。
 今回は「決勝進出ならず」という結果に終わったのですが、けっこうメジャーな文庫の登竜門で二次選考まで進めたこと、作者本人としてもかなり気に入った作品であることから、何らかの形で日の目を見せてあげたいなと思っていました。
 ただ今回は二次選考通過ということで、作品名とペンネーム(烏帽子九郎)が公開されており、この状態で他の新人賞に再応募というのもちょっと難しいかなという気もします。
 作品は他人様に見てもらってはじめて完成。
 誰にも見られないままの状態で後生大事に抱えていても、価値がありません。
 こういう場合、一昔二昔前なら同人誌や自費出版しかありませんでしたが、けっこうなコストがかかるわりに、あまり広くは読んでもらいにくいという重大な欠点がありました。
 今ならいっそのこと、ネットで公開してしまうのが一番手っ取り早く読んでもらえるのではないかということで、特設ブログの開設を思い立ちました。
 この形なら、一応絵描きのハシクレでもある私が、自作イラストをたっぷり描いて添えることも可能です。
「図工室の鉄砲合戦」は、字だけでなく図解を大幅に添付してこそ真価を発揮するものだとも思っています。
 そしてこの物語の内容を、文字になっていない部分まで含めて一番知っている絵描きは、私をおいて他にありません。(←あたりまえ)

 今回の応募作「図工室の鉄砲合戦」は、一応対象読者として小学高学年〜中学生くらいを想定していますが、雑賀鉄砲衆や本願寺寺内町、石山合戦なども主要なテーマになっています。
 戦国時代に関心のある皆様なら、年齢に関係なく楽しんでいただけることと思いますので、是非ご一読を!
 当ブログ「放課後達人倶楽部」では、行く行くこの作品以外にも、手持ちの児童文学系の作品も公開していければいいなと思っています。
 当面は「図工室の鉄砲合戦」をイラストを添えながら新聞連載小説のように週五回くらいのペースで投稿し、約二ヶ月で完結させることを目指します。
 乞御期待!

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 次回投稿では、物語の舞台になった架空の港町「二子浦町」の絵図を掲載してみます。


posted by 九郎 at 22:55| Comment(0) | 図工室の鉄砲合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月15日

架空の港町、二子浦町

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(クリックすると絵図が拡大します)

 物語「図工室の鉄砲合戦」の舞台は、架空の港町「二子浦町」である。
 瀬戸内海の大阪湾よりに位置する小さな湾で、同じ大きさの扇を二つ並べた形をしていることが名前の由来であると伝えられている。
 少し離れた沖に「二子島」という、これもほぼ同じ大きさの小島が並んだ無人島があり、本当はこちらが「二子浦」の名の由来であるという説もあるが、定かではない。
 二子浦の東側には夢野川という一級河川が流れ込んでおり、川をはさんださらに東側は工業地帯だ。
 昔は瀬戸内海を望む景勝地として有名だったが、工業開発が進んだ現在は、二子浦の扇の一つにわずかな砂浜が残されているのみで、かつての面影は乏しい。
 海岸沿いを東西に私鉄が走っており、最寄り駅は「二子浦駅」である。
 駅から海岸へ向かうメインストリートは一応商店街になっているが、お世辞にも賑わっているとは言いがたい。
 それでも地元民が必要とする商店は一通りそろっているので、普通に生活する分にはとくに不便はない。
 どこにでもある、ひなびた港町だ。

 小さくて地味な港町だが、その歴史は中世以前までさかのぼる。
 瀬戸内海で勢力をふるった水軍の拠点の一つであり、戦国時代には夢野川の河口近くの三角州を中心に、本願寺系列の寺内町もあった。
 織田信長と本願寺の十年戦争「石山合戦」では本願寺側の重要な軍事拠点だった。
 その遺構は二子浦の二つの扇の中間部に位置する「二子浦来光寺」に今も残っている。 

 二子浦の西の扇は現在漁港になっている。
 漁港から少し上った小丘陵には二子浦小学校がある。
 新学年が始まったばかりの四月上旬、この小学校で小さな戦争が勃発する。
 その戦争の顛末こそが、物語「図工室の鉄砲合戦」である。

(念のために書いておくと、以上全てフィクションです)

 ……前置きはぼちぼちこのあたりで。
 いよいよ次回から、物語の開幕です。
 乞御期待!
posted by 九郎 at 23:27| 図工室の鉄砲合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月16日

それぞれの朝1

「図工室の鉄砲合戦」
第一章 それぞれの朝

 そいつはどう見ても小学生には見えなかった。
 朝の通学風景の中、ひときわ目立つ体格。
 まわりの子どもたちにくらべて、身長では頭二つ分ほどとびぬけており、体重では倍ほどもありそうだ。
 背中にちょこんとくっついたランドセルだけが、かろうじて小学生っぽい。
 どこもかしこもまるまるとふくらんでいるが、目つきがけっこうするどい。
 ものごしにすきがなく、自分の周囲に半径3メートルほどのバリアーが張ってありそうな雰囲気だ。
 そのよく太った大柄な少年に、つかずはなれずついていく三人組がいる。
 まん中の一人は背が高くがっちりしている。
 先を行く超大型の少年ほどではないが、こちらも小学生ばなれした体格だ。いかにもスポーツマンタイプで肩幅がすばらしく広く、「ボス」のオーラをまとっている。
 脇を固める他の二人も、それぞれに一くせも二くせもありそうだ。
 一人は三人組の中では一番背が高い。身長だけなら前を行く超大型少年と同じくらいありそうだが、こちらはやせたノッポさんだ。細身の体だが、よわよわしい感じはない。走らせたら快速スプリンターだろうし、野球のピッチャーをやらせたら速球を投げそうな印象だ。
 最後の一人は背が低い。小柄だがバネの効いたフットワークで、いかにも動きが速そうだ。顔のあちこちには、これまでのケンカの勲章だろうか、薄く傷跡が残っている。
 三人組はまるで大型の獲物を追う肉食獣チームのようにも見えた。

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 ふいに、三人組のうちの一人、一番小柄な少年が前に進み出た。
「ブー」
 すぐ目の前にせまった超大型少年の背中に声をかける。
「ブー、ブー」
 薄笑いを浮かべながら反応をうかがうが、前を歩く超大型少年は聞こえているのかいないのか、ふりかえりもしない。
「よう、デブ。呼んでんだからこっちむけよ!」
 しびれを切らした小柄な少年が、今度ははっきり呼びかけた。口元の薄笑いは消え、口調がとがってくる。
「ブーつったらお前しかいないだろ、デブ!」
 ランドセルをくっつけた大きな背中がぴたりと止まり、ゆっくりふりかえった。
 向きあってみると、その体格はまさに圧倒的だった。多少は腕におぼえのあるらしい小柄な少年も、思わず立ち止まって相手を見上げる形になる。
 眼光をねじ込むように、超大型少年の顔がぬーっと近づいてきた。小柄な少年がそれに気を取られていると、いきなり左足の甲に激痛が走った。超大型少年の右足のかかとが、思い切りふみ下ろされたのだ。
「いてっ!」
 思わず叫んだ瞬間、今度は巨大な右手にほっぺたをはさみこまれていた。
 ギリギリと万力のようにしめあげられると、ほっぺたの内側が自分の奥歯とはさまって、ものすごく痛い。たまらずアゴをひらくとますます巨大な指先がくいこんでくる。口をふさがれた形になっているので、悲鳴を上げることもできず、その上、足を踏まれて固定されているので身動きも取れない。
「ブーブーブーブーうるせーな」
 相手の顔をひっつかんだまま、超大型少年は低い声で言った。
「おれがデブだからってナメてんじゃねーぞ。ぶちのめされたいか?」
 ものも言えないまま、必死で首を振る。
「おれのことはバンブーと呼べ。他の呼び方はゆるさん。わかったか?」
 小柄な少年は痛みに涙をにじませながら、必死でうなずいた。
 バンブーと名のった超大型少年は、そのまま右手を力いっぱい突き出して、ようやく指先を開いた。しりもちをつきながら、あわてて後ずさって、残り二人と合流する小柄な少年。
 ここまでの様子を何も言わずながめていたがっちりタイプの「ボス」と、超大型少年「バンブー」は、そのまましばしにらみ合う。ほんの数秒間のにらみ合いだったが、本人たちにはすごく長く感じられたことだろう。
 数瞬間の後、最初に沈黙をやぶったのは「ボス」だった。
「いくぞ」
 ボソッとつぶやくと、ほかの二人を引き連れてそのまま歩き去った。
 超大型少年は、そのまま動かない。
 しばらく様子をうかがって、三人組が十分はなれるのを待ってから、「フンッ!」と一息ついた。
 そしてあとは何事もなかったように、再び学校へと歩き始めたのだった。
(つづく)
posted by 九郎 at 22:58| 図工室の鉄砲合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月17日

それぞれの朝2


 早朝の校庭、かたすみにある桜の木の下に、一人の少年がいる。
 小柄で細身、春先にしては薄着の服からのぞく浅黒い手足は、よくひきしまって見える。
 少年はぴたりと鉄砲をかまえている。
 もちろん本物ではない。割りばし製の輪ゴム鉄砲だ。
 なかなか凝った造りで、ライフルのような形になっている。
 まわりに子どもたちの姿はない。まだ朝早いし、校舎裏には元々人けがない。
 四月初めとはいえ、新学期も四日目になると、目の前の桜の老木は半ば以上葉桜で、薄ピンクの花はさほど残っていない。
 それでもたまに風に吹かれた花びらが、ひらひらと舞い落ちてくることがある。
 輪ゴム鉄砲をかまえたまま動かない少年の前を、一枚、二枚と、雪のような花びらが舞っている。

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 ビシュン!
 突然、するどい音が空気を切りさいた。
 少年が引き金を引いたのだ。
 もちろん輪ゴムは花びらに命中しない。
 もともと輪ゴム鉄砲というものは、命中精度がかなり低い。じっとしている的にだって、かなり練習しないとそうそう当たるものではないし、ましてや風に舞う桜の花びらのような、不規則に動いている小さな標的などは、ねらって当てることはほぼ不可能だろう。
 しかしどうやらこの少年は、その不可能を可能にしようとしているらしい。
 ビシュン!
 また輪ゴムの発射音が走った。もちろん今度も命中しない。
「う〜ん、やっぱり無理かなあ……」
 小声でつぶやいた。
「落ち方が風まかせだから、予測できない。雨だれみたいに真っすぐ落ちるのがわかってたら、けっこう当たるんだけど……」
 なかなかすごいことを言っている。
 だれに聞かせているわけでもない独り言なので、嘘やハッタリとも思われない。もし本当ならば、少年は小学生にして凄腕のスナイパーだということになる。
 ビシュン!
 また、輪ゴムの発射音が走った。やはり花びらには当たらない。
「チェッ!」
 軽く舌打ちすると、少年はあきらめたのか、かたわらに放り投げていた手さげ袋を引き寄せた。
 二つ折りにしたボール紙にさっきまで使っていた輪ゴム鉄砲をはさみこむと、ていねいに袋にしまいこんだ。
「コーサクのやつ、もう風邪なおったかなあ」
 そう言いながら、そろそろ子供たちの声が聞こえ始めた校舎に向かって、ぶらぶらと歩き始めたのだった。
 少年の名は土橋タツジ。
 仲間内では「タツジン」と呼ばれている。
 そのニックネームの由来は、ここまで読みすすめてきた皆さんには、なんとなく想像がついていることだろう……
(つづく)
posted by 九郎 at 23:18| 図工室の鉄砲合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月18日

それぞれの朝3


「コーサク、何してんの? 早くしないと遅刻よ!」
 母親の声が階下からひびいてくる。
「はいはい、わかってるよ。もう行くってば!」
 鈴木ヒサトはめんどくさそうに返事する。
 ヒサトという名前なのに、母親に「コーサク」と呼ばれているこの少年、実は病み上がりである。
 6年生になったばかりの新学期、始業式からの連続三日間を、風邪で寝込んで休んでしまったのだ。
 三十八度超えの高熱こそ初日で下がったが、そこからが意外に長引いた。おとなしく寝ていれば良いものを、この少年は少し熱が下がるとすぐに「工作」を始めてしまうのだ。
 風邪がようやく一段落したこの朝も、なにやらゴソゴソと作り続けている。
 年のわりには小柄である。
 メガネをかけており、顔だけ見るとけっこうかしこそうにも見えるが、とくに勉強が得意というわけではない。
 少年、鈴木ヒサトは、工作が大好きだった。
 あまり工作ばかりしていたから、ついたニックネームがそのものずばりの「コーサク」だったのだ。
 ややバカにしたニュアンスのあるニックネームだったが、少年本人はそれなりに気に入っていた。
 少なくとも、以前に呼ばれていた「メガネくん」などというあだ名よりははるかにマシだと思っていた。見た目からつけられるより、好きでやっていることにちなんで呼ばれた方が、まだ納得できるというものだ。
 近頃は両親にまで「コーサク」と呼ばれるようになっていた。
 ふつう親というものは息子の名を子供同士のあだ名で呼んだりはしない。本名か、家庭内での愛称で呼ぶものだ。
 そんな両親にまで「コーサク」呼ばわりされるほどに、ヒサトの工作好きは徹底していた。勉強そっちのけで工作ばっかりやっているわが子に、さすがの親もあきれ返ってしまったのである。

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 当のコーサクが今現在ハマっているのは輪ゴム鉄砲作りだった。
 もう二カ月以上作り続けている。5年生の図工の授業で割りばし鉄砲を作ったのがきっかけで、クラスの男子を中心に輪ゴム鉄砲ブームが起こったのだ。
 割りばしを材料にした輪ゴム鉄砲は、材料費が安く、ちょっとした工夫がやりやすい。銃身をのばしたり、連発式にしたりすると、けっこうオリジナルの鉄砲になる。授業が終わった後も、男子はみんな熱中して遊び続けた。
 それでも二週間ほどたつと、さすがに誰でもすぐに思いつくような工夫は尽きた。
 小学生にはほかに楽しい遊びがいくらでもある。学年末で学校行事が続いたこともあって、輪ゴム鉄砲ブームはごく短期間で過ぎ去ったのだった。
 ところが、誰も見向きもしなくなった輪ゴム鉄砲を、学年が終わって春休みに入ってからも、ずっと作り続けている変わり者二人組がいた。
 コーサク(鈴木ヒサト)とタツジン(土橋タツジ)である。
 タツジンはもっぱら射撃技術修行にのめり込み、コーサクは輪ゴム鉄砲自体の開発、改良にのめり込んだ。
 この二人組はこれまでにも様々な遊びにのめり込んできた前歴がある。タツジンは技術修行、コーサクは遊び道具の制作にハマってきたのだ。
 周囲の流行とはほとんど無関係に、独自の盛り上がりを繰り返すタツジンとコーサク。
 ほかの友人達からはちょっと変人あつかいされながらも、二人は息の合ったコンビとしてけっこう知られているのだった。
 コーサクが今、遅刻を気にしながら制作しているのは、輪ゴム鉄砲の最新作である。
 材料はもはや割りばしのレベルではない。数種類の角材を組み合わせ、ボンドや木ねじで固定した、本格的な造りのものになっている。
 グリップの部分をにぎって確かめながら、切り出しナイフで形を整え、サンドペーパーで仕上げている。ナイフをあやつる手付きには危なげがなく、カッターナイフで鉛筆を削ることすらまれな最近の小学生としてはめずらしい。
「コーサク! いいかげんにしなさい!」
 母親の声がとがってくると、ようやくコーサクはナイフを机に置いた。
 しょーがないな、とつぶやきながら、サッと輪ゴム鉄砲をかまえ、一回だけバンッ!と撃つマネをした。
「ま、こんなもんか」
 コーサクはその新作をていねいにボール紙ではさみ、ランドセルにさしこんだ。階段をかけおり、母親の横をすりぬけ、「行ってきま〜す!」と玄関を飛び出した。その勢いのまま学校へと急ぐ。
 コーサクの胸には、実はちょっとだけ不安もあったりする。
 6年生になったばかりの新学期、新しいクラスの新しい教室に、自分だけ三日おくれで入らなければならないことに……
 我が道を行くタイプのコーサクも、まわりと自分の関係に思いがおよぶお年頃に、ぼちぼちさしかかっていたのだ。
 幸い、「変わり者コンビ」の片割れ、タツジンも同じクラスだと聞いている。今日はさっそく新開発の輪ゴム鉄砲を披露してやろう。不安もあるが、とにかくそれを楽しみに通学路を急ぐ。
 時間を気にしながら住宅街をかけぬけると、ぷんと潮の香りがただよってくる。コーサクが住んでいるのは小さな漁港に近い一画で、小学校は海辺の高台にある。学校へと続くゆるい坂からは、ひなびた港町の風景が一望できる。
 息を切らせながら坂をのぼると、ようやく学校が見えてきた。コーサクの通う二子浦小学校、略して「浦小」の校舎だ。
 しかし大急ぎで校門をくぐった瞬間、無情にも始業のチャイムが鳴り始めてしまった……
(第一章終わり。第二章「出遅れた新学期」につづく)
posted by 九郎 at 21:55| 図工室の鉄砲合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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