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2014年05月22日

浦小鉄砲合戦始末記4


 やがて下校時間になった。
 図工室に集まっていた美術部メンバーも、てきとうに片付けて校舎を出、校門のところで「バイバイ」して、それぞれの家路についた。バンブーがみんなとわかれてしばらく歩くと、一人になるのを待っていたように、背後から声がかかった。
「よう」
 ふりかえると、そこにはタイショー、織田ヒロトの姿があった。
 今回は一人である。いつものような「三人組」ではない。
「……なんか用かい?」
 バンブーが答える。両者、しばらくの沈黙。
 別に用ってわけでもと、タイショーがガリガリと頭をかいた。
 そしてしばらくの沈黙のあと、こう言った。
「なんつーか……バンブーって呼んでもいいか?」
 ふとバンブーの表情がゆるんだ。
「……いいぜ、タイショー」
「ああ、そう」
 再び両者沈黙。
「……まあ、そんだけ。じゃあな」
 それだけ言うと、織田ヒロトはさっさとその場を後にしたのだった。


 そろそろ日のかたむいた6年1組の教室に、たった一人、担任の斎木マモル先生の姿があった。
 もう下校時間はずっと前に過ぎており、教室にも校庭にも、生徒の姿は一人もない。
 まだ午後五時前なので、職員室にはほとんど全ての先生が残っているが、それ以外の校舎内はガランとして静まりかえっている。
 斎木先生は、自分の教室をゆっくり巡回しながら、生徒による掃除が行きとどかなかった所を清めたり、ゆがんだ机をまっすぐ直したりしている。

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 斎木先生はきれい好き、片付け好きだ。
 お片付けは、単に目の前のものを整えたり収納したりすれば良いというものではない。
 それぞれのものには、それぞれに座りの良い場所というものがある、と斎木先生は考えている。
 理想的な位置に収まったものは、使いやすく、片付けやすく、ちらばりにくくなる。
 この新しいクラスの教室は、まだまだ使いこみが足りないので、何をどこにおけば良いのかわかりきっていない。
 ちらばりやすく、一回一回の片付けに試行錯誤が必要なので、時間がかかる。
 それでも新しいクラスがスタートして約一週間たった今、それなりに、ものの配置の方向性は見えてきたような気もする。
 ゆっくり教室内を見回し、ときに立ち止まって考え事をしながら、このもの静かな先生は、放課後のひと時を過ごしている。一つ一つの座席にすわる生徒の顔を、一人一人思い浮かべながら、何事かを考え続けている……

(「図工室の鉄砲合戦」完)



posted by 九郎 at 22:21| 図工室の鉄砲合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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