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2020年10月12日

「ブランコ一回転!」第七章1〜2(全)

第七章


 翌日、九月三十日、月曜日。
 午後五時半、ぼくは一人いなり公園にむかった。
 もうレンは来ないとわかっていたけど、なんとなくもう一度行ってみた。
 やっぱりだれもいなかった。
 なんとなく景色が変わったと思ったら、一週間前にはたくさん咲いていたヒガンバナが、もう一本ものこっていなかった。
 変にガランとした公園で、何をするでもなくブランコにすわった。
 六時まで時間をつぶして、そのまま自転車で帰った。
 公園の横の劇場を通りかかると、シャッターが下りていて、「本日休業」の張り紙がしてあった。
 そして、看板が変わっていた。
 昨日までの白蓮座、浪川花蓮さんの美剣士にかわって、旅姿の役者さんの絵になっていた。
 明日は十月一日。
 次の劇団の公演がはじまるんだ。
 劇場前の通りを、ザーッと冷たい風が吹き抜けていく。
 もう夏の名残りは、かけらものこっていない。


 レンとは、いつかまた、きっと会える。
 何年先になるかわからないけど、また会える日が来る。
 友だちって、そういうものだと思う。
 たまに、レンの言葉を思い出す。

「できるけど、できない。できないけど、できる」
「やる方と見る方の間でなら、できないことでも本当になる」

 二十数年前、ぼくのお父さんと、一人の女の子の間で、「ブランコ一回転」の伝説が生まれた。
 二子浦小学校で語りつがれたその伝説がきっかけになって、レンの「ブランコ一回転」は、ぼくとの間で本当になった。
 では、ぼくにできる「ブランコ一回転」って、なんだろう?
 運動の才能がないぼくには、レンと同じことはできない。
 ぼくにだけできることがあるとしたら、それはやっぱり「ものの見方」をつかった何かだ。
 だからちょっとためしに、このノートに、レンとぼくの「ブランコ一回転」のことについて、書きとめてみている。
 これを読んだ人の頭の中で、「ブランコ一回転」が本当になるかどうか、それはぼくにはわからない。

 タツジンとトノサマに、レンのことをなんて話そうか、考えている。
 無理には話さないでおこうとも。

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「ブランコ一回転!」完
posted by 九郎 at 00:00| Comment(0) | ブランコ一回転! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする